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吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんの人気マンガ「鬼滅の刃」が原作の能 狂言「能 狂言『鬼滅の刃』」の制作発表会が4月5日、観世能楽堂GINZASIX(東京都中央区)で行われ、演出、出演する狂言師の野村萬斎さんらが出席した。萬斎さんは、「鬼滅の刃」の能 狂言化について「鬼を描くことは能の専売特許。『鬼滅の刃』と親和性がある」と話し、「能 狂言のきもは見立てです。見立てることで、アニメや2.5次元のリアリティーのあるものというより、皆さんの想像力に訴えるものになる」と説明した。
「能 狂言『鬼滅の刃』」は、萬斎さんが演出を手がけ、木ノ下裕一さんが補綴(脚本制作)を担当。人間国宝の大槻文藏さんが監修する。萬斎さんは、「鬼滅の刃」の印象を「吾峠先生の絵の素晴らしさが目に飛び込んできた。ストーリーが日本に根ざした展開で、鬼というものが主題になっている。非常に能 狂言の世界に近いと感じた」と話した。
萬斎さんは、「鬼滅の刃」では、人間が鬼になってしまった背景、鬼の悲しみが描かれていることに触れ、「鬼になる理由、因果があるからこそ、悲しみがある。それを描いてきたのが能です。狂言は鬼のほうが人間らしいと見せることもある。『鬼滅の刃』と能 狂言の親和性もさることながら、能と狂言のフィルターに当てることによって鬼の描き方がより輝くものになればいいなと思います」と思いを語った。
続けて、「鬼滅の刃」の能 狂言化では「チャレンジも必要」と話し、「能 狂言の手法に全てはめ込むのではなく、『鬼滅の刃』の世界に入っていくようなチャレンジもないと、能 狂言もアップデートできない。普段と違うことを考えつかなければいけない」と語った。「鬼滅の刃」に登場する水の呼吸については「水の呼吸をどう表現するのか、悩ましいところです。CGを使えばできますが……(笑い)。みんなで知恵を出し合いながら、アイデアを盛り込んでいきたい」と語っていた。
発表会には補綴(脚本制作)を担当する木ノ下さんも登場し、制作について語った。木ノ下さんは「原作をどれだけ尊重できるか」「能 狂言としておかしくないか」という2点を大事にしているといい、「筆をとる上で、吾峠先生と世阿弥先生の2人の先生がいる。『これは能としておかしくないですか?』と世阿弥先生に問い、吾峠先生に『ここでは何を伝えたいのでしょうか』と問うような。死に物狂いで執筆中でございます」と苦労を語った。発表会には、大槻文藏さん、竈門炭治郎役、禰豆子役の大槻裕一さんも登場した。
「能 狂言『鬼滅の刃』」は、シテ方として、大槻文藏さんが下弦の伍の累役、大槻裕一さんが竈門炭治郎役、禰豆子役を担当。狂言方として萬斎さんが鬼の鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)役、炭治郎の父・竈門炭十郎役、鎹鴉(かすがいからす)の天王寺松右衛門役、野村裕基さんが我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)役、野村太一郎さんが嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)役、鋼鐵塚蛍(はがねづか・ほたる)役を務める。ワキ方として、福王和幸さんと福王知登さんが交互出演で、冨岡義勇を演じる。
観世能楽堂GINZASIX(東京都中央区)で7月26~31日、大槻能楽堂(大阪市中央区)で12月9~11日に上演される。
「鬼滅の刃」は、家族を鬼に殺された竈門炭治郎が、鬼に変異した妹・禰豆子を人間に戻すために旅立つ……というストーリー。2016~20年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された。コミックスの累計発行部数は1億5000万部以上。
「テレビアニメ『鬼滅の刃』竈門炭治郎 立志編」が2019年4~9月、「テレビアニメ『鬼滅の刃』遊郭編」が2021年12月~2022年に2月に放送された。2020年10月に公開された劇場版「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の累計興行収入が日本の映画史上初めて400億円を突破したことも話題になった。新作テレビアニメ「刀鍛冶の里編」が制作されることも発表されている。
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